​​代表メッセージ

健康で豊かな未来を創る正しい知識と賢い選択力を。

​日本人の根幹である「和食」という文化

 日本文化の象徴ともいうべき「和食」が高い評価を得てきています。日本人の手先の器用さが生み出す自然と一体化した和の造形美はもとより、米を主食とし味噌汁とのセットを基本とした食事は栄養学的にも優れたものです。穀物のなかではタンパク質の少ない米と豆のなかでもタンパク質に富む大豆の組み合わせは理にかなったものなのです。さらに詳細にみれば、タンパク質に富むが含硫アミノ酸に乏しいという大豆のアミノ酸組成に対して、タンパク質に乏しい米に含硫アミノ酸が比較的豊富に含まれていることから、両者は短所を補い合う素晴らしい組み合わせであることがわかります。古来から和食の基本であるこの組み合わせは日本人が経験的に到達した食の根幹であるといえるでしょう。

和食育
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​日本の人・風土に合ったものを考える

 明治時代になり近代国家樹立をめざした日本政府は当時の先進欧米諸国から科学技術・知識を無分別に導入しました。栄養学もその一つで主にドイツから知識が取り入れられましたが、欧米の栄養学はアジアの民族には馴染みませんでした。アングロサクソンは離乳期を過ぎても乳糖を分解する酵素ラクターゼの活性が落ちないという、人類だけでなくほ乳類のなかでも特異的な代謝系を有する集団で、穀物が充分に育たないヨーロッパ北部の地で、ヒトが食べることができない牧草類を家畜の飼料として畜産物を生産し、間接的に利用するには有利であったのでしょう。しかし、温度と水に恵まれ、豊かな作物が生産される東あるいは東南アジアに住むモンゴロイドは、ラクターゼ活性が低下しており、一般的なヒトには消化器官の不調をもたらすことになります。

 このように深く考えず他国の物まねで置き換えようとすると問題が生じます。なかでも、近年の農地の集積・大規模化による中核農家育成は日本の自然環境を全く無視したものです。大陸型の大規模経営は平坦な気候変化の緩やかな地域で効果的でしょうが、日本のように情緒豊かな季節の移ろいがあり、変化に富む気象条件下ではいろいろな農作業の行える期間が限られており、大規模経営では季節に合わせた細やかな農作業を適期に行うことができません。かつてのように経営規模が約1haであった頃は、機械への過剰な投資が経営を圧迫してはいましたが、肥培管理は行き届き、生産される作物は高品質で高い評価を受けていました。しかし、平地が少ない日本では農地の高低差が大きく、一筆ごとが決して広くないことから、圃場の集積による規模拡大でのコスト削減効果は小さく、むしろ細やかな管理が不可能になっただけ品質・評価を落としているのです。日本独自の気候にあった適切な規模を考慮するべきです。

 

 世界では継続して進む人口増加、環境変動による農業被害の増大、農地の減少や劣化、農業従事者の高齢化など食料に関する不安は大きいです。日本では食料自給率が低いことが問題視されていますが、その計算式から本質は解答されていません。日本の食料生産は政府の優遇する中核農家ではなく、中小兼業農家が多くを担っている現状を無視してはならないのです。

 

 自由主義経済を標榜する日本では流通が異常な力を持つようになり、まるで工業製品と同質であるかのように全国で画一化された農作物供給を行っています。そのため試験研究機関で育成された広域適応性品種だけが集荷・流通対象となり適地とはいえない地域でも特定の品種が無理をして栽培されている現状です。日本での栽培歴の長い作物には地域ごとに在来品種といわれる地域特有の品種が栽培・消費されていましたが、生産量が小さいため、流通に乗ることが難しく、必ずしもその地域に適していない育成品種に置き換わっています。遺伝的な多様性の維持という点からみても在来品種を維持していくことは重要であり、いずれ地域の財産となる時が来るでしょう。

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賢い消費者になり、ひとりひとりが選択力を持つこと

 幾多の公害問題や原発事故を経験した日本人、特に育児中の人々は食の安全・安心に強く関心をもつようになりました。そのような中、「化学合成された肥料や農薬は悪いものである」、「作物は栽培方法によっては無肥料で育つ」、「自然農法がよい」との考えが広まっています。

 自然天然が良いと言っても、天然物にもいろいろな毒性を持つものが存在し、各種キノコやフグ等の毒やジャガイモの芽のソラニン、キャッサバのいもに含まれるシアン化合物など枚挙にいとまがありません。100%安全なことは難しく、安心の基準をどこに置くかは、個人の選択力が問われることです。本当に安全で安心な食生活を営むには消費者として正しい知識を持つことが不可欠です。

 

 日本の地で暮らし日本の気候に適応した日本人の身体機能に合った、日本で生産される食材を活かす和食の意味や価値を考え、基本的な知識を身につけて活用すること、つまり「和食育」が重要であると考えています。

 和食育協会では日本の文化・伝統に根ざした日本人に最も適した食材や調理方法の普及に尽力する人材を育成し、共に手を携えて健康で豊かな未来を築いていきたいと願っています。

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一般社団法人和食育協会代表

​梅﨑輝尚